手作業のコストは、どの式で計算するのか?
手作業の年間コストは、「1回あたりの作業時間 × 実施頻度 × 担当人数 × 実質時給」で計算します。作業時間を「時間」に換算し、1年間の実施回数を掛け、担当者の実質時給(後述)を掛けるだけです。
ポイントは3つです。①分単位の作業を時間に直す(分÷60)、②「1日あたり/1週あたり/1ヶ月あたり」の頻度を年間の回数に換算する、③額面の給与ではなく会社の実負担である「実質時給」を使う。
「実質時給」とは何か?なぜ額面給与を使わないのか?
実質時給とは、会社が実際に負担している1時間あたりの人件費です。額面の給与だけでなく、社会保険料などの会社負担分(法定福利費)を含めます。額面だけで計算すると、手作業の本当のコストを2割ほど小さく見積もってしまうため、実質時給を使います。
たとえば所定内給与(残業代・通勤手当を除いた基本給)が月29万円の担当者なら、実質時給は「290,000 ÷ 166.7 × 1.15 ≒ 約2,000円」です。職種別の実質時給の目安は下表のとおりで、厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』をもとにした概算です。
| 職種の目安 | 実質時給(会社負担込み) |
|---|---|
| 事務・データ入力 | 約1,700円 |
| 現場・製造・物流 | 約1,800円 |
| 経理・総務 | 約1,900円 |
| 管理職・有資格者 | 約2,700円 |
年間の作業時間は、どう出すのか?
「1日あたり◯回」といった頻度を、年間の実施回数に換算します。使う年間換算係数は次のとおりで、土日祝を除いた実働日数などを保守的に見込んでいます。
| 頻度の単位 | 年間換算係数 | 意味 |
|---|---|---|
| 1日あたり | × 240 | 年間の営業日数の目安 |
| 1週あたり | × 52 | 年間の週数 |
| 1ヶ月あたり | × 12 | 年間の月数 |
たとえば「毎日1回・15分」の作業なら、年間作業時間は「0.25時間 × 1回 × 240日 = 60時間」。「毎月100件・1件5分」の請求書作成なら「(5÷60)時間 × 100件 × 12ヶ月 = 100時間」です。
なぜ削減率を100%にしないのか?
自動化しても、手作業がゼロになるわけではありません。確認作業・例外処理・初期設定は人に残ります。そのため削減額は「削減率100%」ではなく、作業の性質に応じて60〜80%に抑えて見積もります。この保守的な設定が、絵に描いた効果ではなく現実的な数字を出すための肝です。
| 作業の種類 | 想定削減率 |
|---|---|
| データ転記・コピペ/集計・月次レポート | 80% |
| 請求書作成・日報・報告書・その他の定型作業 | 70% |
| 予約・受発注管理(相手のある業務) | 60% |
年間削減額は「年間コスト × 削減率」で求めます。入力ミスや手戻りの減少、心理的負担の軽減といった副次効果は、過大推定を避けるため金額には含めていません。
自動化の投資回収は、どう見るのか?
投資回収は「回収月数」で見ます。回収月数 = 初期費用 ÷(年間削減額 ÷ 12)。1ヶ月あたりの削減額で初期費用を割るだけです。回収月数が短いほど、その作業は自動化する価値が高いと判断できます。
具体例:毎日15分の転記作業は、年間いくらか?
前提:毎日1回・1回15分のデータ転記/担当1人/実質時給2,000円(月給約29万円相当)
① 作業時間:15分 ÷ 60 = 0.25時間
② 年間の回数:1回 × 240日 = 240回
③ 年間コスト:0.25 × 240 × 1人 × 2,000円 = 120,000円/年
④ 削減率(転記=80%):120,000 × 0.8 = 96,000円/年 を回収可能
⑤ 回収月数(初期費用¥30,000のGAS自動化):30,000 ÷(96,000 ÷ 12)= 約4ヶ月で回収
毎日15分の転記1つで、年間 約12万円。自動化すれば約4ヶ月で初期費用を回収し、以降は毎年約9.6万円ぶんの時間が浮きます。
この「毎日数分」の作業が2〜3個重なると、気づかないうちに年間で数十万円が手作業に消えます。まず自社の作業を書き出して金額に換算するのが、自動化の判断の第一歩です。
前提と出典
- 実質時給の目安は、厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』および2024年度の社会保険・雇用保険料率に基づくベンチマーク係数を用いた概算です。実額は業種・地域・雇用形態・業務内容により変動します。
- 数値は過大推定を避けるため意図的に保守的(控えめ)に設定しています。削減率は100%ではなく60〜80%に抑えています。
- 実質時給は所定内給与(残業代・通勤手当を含まない基本給ベース)に、法定福利費の会社負担を係数1.15で上乗せした値です。社会保険未加入のパート中心なら実額はこれより小さくなります。
- 入力ミス・手戻りの削減、信用リスク低減、心理的負担の軽減などの効果は金額に含めていません(定性的な参考のみ)。
- 本ページは概算の考え方であり、効果を保証するものではありません。正確な効果と最適な進め方は無料相談で個別に試算します。